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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)56号 判決

第一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第二 そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

一 成立に争いない甲第二号証(実用新案登録願書及び添付の明細書と図面)及び第三号証(手続補正書)によれば、本願考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が左記のように記載されていることが認められる(別紙図面A参照)。

1 技術的課題(目的)

本願考案は、主として手動式値付機(ハンドラベラー)等に使用する値札に関する(明細書第一頁第一一行及び第一二行)。

土産物等に貼付する値札は、購入時には商品の値段を表示する必要があるが、例えばこれを贈る相手方に値段を知られたくないために購入後はこの部分を取り除く必要があると同時に、商品の製造年月日等は相手方に知らせる必要があるので、一枚の値札で両者の機能を併せ持つものの出現が待たれていた(同第一頁第一三行ないし末行)。

本願考案の技術的課題(目的)は、値札の必要な部分は被貼着物の表面に残存するが、不必要になつた部分は容易かつ美麗に切り取つて除去することができる値札を、安価かつ多量に提供することである(手続補正書二枚目第八行ないし第一三行)。

2 構成

本願考案は、右技術的課題(目的)を解決するために、その要旨とする実用新案登録請求の範囲記載の構成を採用したものである(手続補正書五枚目第二行ないし第一〇行)。

別紙図面Aはその一実施例を示すものであつて、第1図は値札の斜視図、第2図は値札の一部を断面とした斜視図、第3図はその利用法を示す図である。なお、図において、1は値札片、2は切り取り用ミシン目、3は粘着剤層、4は剥離シート、5はカツト部、6は係合孔である。(明細書第五頁第九行ないし第一三行)。

値札片1のほぼ中心線周辺に切り取り用ミシン目2が列設され、値札片1は切り取り用ミシン目2において切り取ることができるが、値札片1の一方の表面には製造年月日あるいは製品名のように後日まで常に貼着して表示する必要のある事項が印刷され、他方には価格など除去する方がよい事項が印刷される(同第二頁第一六行ないし第三頁第三行)。

粘着剤層3は、値札片1の裏面の、切り取り用ミシン目2で区画された一方の部分(すなわち、常に表示する必要がある事項が印刷されている部分)に形成される(同第三頁第六行ないし第一〇行)。

係合孔6は、ハンドラベラー7の移送回転体8の爪9に係合する係合孔であつて、値札片1と剥離シート4を通して貫通されている(同第三頁第一九行ないし第四頁初行)。

3 作用効果

本願考案によれば、粘着剤層によつて貼着された部分は常に被貼着物に貼付されて所定事項を表示するが、粘着剤層が欠如した部分は、不要になれば切り取り用ミシン目から切り離されて除去することができる。しかも、各値札片が連続して形成され、各値札片を切り離すカツト部に移送体と係合する係合孔が形成されるから、値札片の中央に係合孔が形成されることがなく、印字等を美麗になし得る。のみならず、切り取り用ミシン目が各値札片の前後に形成される係合孔の間に形成されるので、係合孔の働きにより容易に切り取り用ミシン目を切り離すことができ、切り取つた後においても美麗な値札片を維持することができる(手続補正書三枚目第一八行ないし四枚目第一八行)。

二 原告は、審決の相違点の判断を争い、引用例2にはラベル構造体に移送切込線を形成することが記載されているが、この移送切込線は専ら回転体の移送ピンに係合してラベル構造体を移送するためのものである、と主張する。

しかしながら、審決が引用例2から援用した技術的事項は、前記のとおり「各値札片が連続形成され、移送機によつて移送される値札において、移送機との係合部を、各値札片切離し用カツト部のほぼ中央部に形成された貫通孔とすること」であるから、原告の右主張は、審決の理由説示に沿わないものといわざるを得ない。

すなわち、成立に争いない甲第五号証によれば、引用例2記載の考案は、ハンドラベラー等に用いられる帯状の感圧性ラベル構造体、特に、ラベル材料と支持材料に押出しと引出しの二つの力を同時に加えつつ移送し、狭い間隙間でループを形成させながら剥離するP.S.P(Push Separate pull)方式に好適な構成のラベル構造体に関するものであるが(第二欄第一八行ないし第二四行)、従来例である第17図の説明として(第二欄第二五行)、ラベル構造体30aのラベル材料31はその幅方向に等間隔に刻設された分離切込線34によつて連接した多数の単一ラベル片31a、31a…に成されること、分離切込線34の線上においてラベル材料31と支持材料33の双方に移送孔35a、35a…が穿成され、ラベル構造体30aを貫通していること(第四欄第三九行ないし第五欄初行)が記載されていると認められる(別紙図面C参照)。

このように、引用例2には、帯状のラベル構造体について、各分離切込線のほぼ中央に移送用の孔を形成する技術が明確に開示されている。したがつて、右技術を、同一の技術分野に属する引用例1記載の値札(その構成が審決の理由の要点2摘示のとおりであることは、当事者間に争いがない。)の、移送体に係合される係合部として採用することは、当業者ならば何らの困難もなく想到し得た事項と考えられる(成立に争いない甲第四号証によれば、引用例1には「部分切断部20は、図示の通りラベル材料12の全体を通つて延びるが間にランド又は破れ易い部分を残すミシン目切り込みによつて形成されるのが好ましいが、本明細書に使用する語句「部分切断」は、刻み目を入れたり折り目を入れたりすることも含む。」(第六頁右下欄第六行ないし第一一行)と記載されていることが認められるので、引用例2記載の技術的事項を引用例1記載の発明に適用することが当業者にとつてきわめて容易であつたことは明らかである。)。

そして、このように引用例1記載の技術的事項と引用例2記載の技術的事項を組み合わせるならば、各値札片(引用例1記載の発明にいう第一のラベル部分、あるいは、第二のラベル部分)の中央に孔などが開けられることがなく、しかも、各値札片を切り離すときは孔の働きに容易に切り離すことができるという作用効果を奏するであろうことは、当業者がきわめて容易に予測し得た事項というべきである。

したがつて、審決の相違点の判断の誤りをいう原告の主張は失当である。

三 以上のとおりであるから、本願考案は当業者が引用例1、2記載の技術的事項に基づいてきわめて容易に考案をすることができたとする審決の認定及び判断は正当であつて、審決には原告が主張するような誤りはない。

第三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。

〔編注1〕本願考案の要旨は左のとおりである。

各値札片が連続して形成された、移送体を有するものによつて移送される値札であつて、

各値札片を切り離すカツト部において、各値札片を順次移送するための移送体と係合する係合孔が形成され、かつ、該各値札片の前後に形成された係合孔間に切り取り用ミシン目が形成され、前記切り取り用ミシン目で分割された値札片の裏面の一方の部分にのみ、粘着剤層が形成され、他方の部分には粘着剤層が欠如した、値札(別紙図面A参照)

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙図面A

<省略>

<省略>

別紙図面C

<省略>

(他は省略)

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